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うまレターコラボ
川島正太郎騎手インタビュー

人馬がつなぐ船橋ストーリー
第9回

中央・地方の垣根を越えて、競馬業界全体の活性化を目的に発行されるフリーマガジン「うまレター」とのコラボレーション企画の第9弾!

船橋競馬の強い人馬をご紹介するこのコーナー。今回は現在、騎手会長として船橋ジョッキーズをまとめている川島正太郎騎手です。これまでの騎手人生を振り返るとともに、亡き父、川島正行調教師についても語ってくださいました。

―― 2008年のデビューから、これまでの騎手人生を振り返るといかがですか?
川島 
あっという間でした。父がいた頃はその期待に応えなきゃいけないという思いもありましたが、今は騎手会長になりましたので、そういう面での責任感が生まれてきました。自分の中でもやっと余裕が出てきたかなという感じです。

―― 川島正行調教師の御子息として17歳で華々しくデビュー。その年の8月にはプライドキムでクラスターカップを制覇し、他場初騎乗、重賞初騎乗にして史上最年少のダートグレード競走優勝を飾りました。当時を振り返っていただけますか?
川島 
今でもはっきりと覚えています。プライドキムは脚元の関係で普段はミッドウェイの坂路で調整していたのですが、クラスターカップの追い切りで船橋に来た際に初めて跨り、「こんなに速い馬がいるんだ!」と衝撃を受けたんです。川島厩舎のオープン馬にも乗っていましたが、この馬のインパクトはとても大きかったです。

―― 実際のレースはいかがでしたか?
川島 
パドックからずっと落ち着いていて、ゲート裏にきたらピリッと気合がのってきて、さすが中央オープン馬だなという雰囲気でした。馬がレースを分かっていたので、僕は乗っているだけでしたね。

―― ご自身のプレッシャーはどうでしたか?
川島 
大先輩の戸崎圭太騎手も同厩舎のディープサマーで騎乗していましたし、内田博幸騎手も参戦していましたからね。プライドキムは人気もなかったのでプレッシャーは全然なく、わりとリラックスして臨めたと思います。でも改めて見返すとひどい追い方をしていますし、本当に乗っているだけ(笑)。父の仕上げがすごかったのだと今でも思っています。

―― この勝利もあって、2008年はNARグランプリ優秀新人騎手賞、日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞されましたね。
川島 
プロスポーツ大賞は父が獲らせたかったようで、その期待に応えなきゃと思っていました。ですから、本当に良い馬に乗せていただいたなという気持ちだけです。今思えば、自分が未熟すぎて取りこぼしのレースばかりでした。

―― デビューから14年。成績に関しては満足していますか?
川島 
まだまだですね。自分の納得できる乗り方はできていないです。

―― それでも今年は50勝(2021年11月29日現在)。キャリアハイの51勝は更新できそうですね。好調の要因は?
川島 
これまでトレーニングはしてこなかったのですが、実は2020年からパーソナルジムに通い始めたんです。前年は21勝でしたから、数字が物語っていますよね。確実に結果に表れています。

―― 何が変わったのですか?
川島 
レースに乗っていて余裕が出てきました。今まで意識していた力の入れどころが全く違っていたり、朝の調教だけではレースで上手く乗るのは無理なんだなと気づかされました。それとトレーナーの方がとても良い方で、元プロ野球選手なんです。同じアスリートだったということもあり、精神面でも良いトレーニングをしてくれます。

―― トレーニングをしようと思ったきっかけは?
川島 
最初は友人の紹介で、先輩がパーソナルジムを始めるからどうかって。ちょうど騎手としてずっともやもやしている時期で…。「成績が出ない」「全然上手く乗れていない」「馬を動かせていない」って、自分に対して不満があったんです。ですから、その友人の紹介が良い出会いになりましたね。

―― 思い出に残っている馬を教えてください。
川島 
もちろんナイキマドリードです。船橋記念4連覇できたというのは大きいですね。

―― どんな馬でしたか?
川島 
厩舎で飼い葉をつける時は特に危ない馬だったらしいんです。でも調教では人間の言うことをよく聞いてくれて大人しいし、無駄な力を使わず、レースでは一生懸命に走ってくれました。

―― ナイキマドリードとのコンビで印象深いレースは?
川島 
3連覇目の船橋記念です。これはあまり話したくないというか、仲の良い人にしか話していなかったエピソードなんですが…。前走の浦和のゴールドカップ(5着)で下手な乗り方をしてしまったんですよ。それで自分から「前回、下手に乗ってしまったので、上手な騎手に替えてください」とお願いしたんです。でも先生は「お前が乗れ」って。担当厩務員さんも「お前が乗って勝ってくれ」と言ってくれました。そういうことがあったので、その船橋記念を勝った時はかなり感情が昂ぶりました。それで次の日の朝、担当厩務員さんに「昨日はありがとうございました」とお礼したら、「かっこよかったよ!」って。その時は、めちゃくちゃ泣きそうになりました。本当に感情が入っていたレースで、当時の悔しさとか嬉しさを思い出すと今でも涙が出てきます。

―― ナイキマドリードで4連覇した船橋記念、2022年は1月13日(木)に行われます。船橋の1000m戦はどんなコースなのか、勝つ馬の条件も教えてください。
川島 
1000mは短い距離ですが、どこかで息をいれないと勝てないですね。平場ではスピードだけで勝つ馬もいますが、重賞となると違う気がします。どこかで息を入れて、直線でまた脚を使うイメージです。よく父が言っていたのが「長距離の逃げ、短距離の差し」。確かに差しはきいていると思いますよ。

―― 騎乗の時に大事にしていることを教えてください。
川島 
乗せていただいた馬の能力を発揮できるように、それを考えて騎乗しています。まだ全て上手く乗れているわけではないので、もっと頑張りたいです。

―― 勝ちたいレースはありますか?
川島 
帝王賞です。レース名がかっこいいのと、小学生の頃に僕と弟を父が大井競馬場に連れて行ってくれて、ネームヴァリューと佐藤隆騎手の勝利を目の前で見て鳥肌が立つくらい感動したので。

―― お父様は勝つ自信があって息子2人を現場に連れていったのですかね?
川島 
もちろんです。父は勝てる時が分かる人でした。だから、インパクトのある衣装も勝つと思っている日にしか着ていないはずです。逆に負ける時も分かるので、レースに乗せてもらって負けてもめちゃくちゃに怒る人ではありませんでした。自分が元騎手というのもあるでしょうし、普段から厩務員さんが昼寝をしている時間帯に馬房に行って、よく馬をチェックしていたらしいので。本当に目が利く人でした。

―― 改めて、川島正行調教師はどんな存在なのか教えていただけますか?
川島 
常に父の背中があって、今もずっと追いかけています。実は、他界する直前に夢に出てきてくれて、「ピシッと乗れ」とひと言だけ言われました。その「ピシッ」という感じが父らしい言い方で…。その言葉を胸に、一人前になれるよう頑張りたいです。

―― 特に2021年は、川島正行厩舎ゆかりの方々の活躍が目立ちましたよね。
川島 
今でも皆さんの記憶に残っているのがすごいことですし、残したものも本当に大きいと思います。

―― 今後、どのような騎手を目指していきたいですか?
川島 
関係者の方から自信を持って任せてもらえる騎手になりたいです。

―― 2022年の目標を教えてください。
川島 
任されたレース全部を勝つくらいの気持ちで乗っていきたいです。

―― さて、現在31歳ということで年齢的には中堅。後輩も増えてきましたが、どう感じていますか?
川島 
船橋は若手騎手の数は少ない方ですが、その中でも篠谷葵騎手なんかは見ていて羨ましいと思うくらい、乗っているハマりがいいんですよ。これからの活躍に期待したいです。

―― 先輩たちについてはどうですか?
川島 
やはり森泰斗騎手。あれだけ続けてリーディングトップというのは本当にすごいです。見習わなければならないところがたくさんあります。あとは、本橋孝太騎手や、本田正重騎手、年齢は上の張田昂騎手もみんな活躍していますよね。あっ、そういえば葵も含めて勝負服に黄色が入っているから、僕も入れた方がいいかな(笑)。

―― 仲の良い騎手は誰ですか?
川島 
本橋、本田は親友です。彼らの活躍は嬉しいですし、自分も追いつけるように頑張ろうと励みになります。

―― そして、2020年には騎手会長にも就任しました。コロナ禍で大変なことも多かったのではないでしょうか?
川島 
感染対策など、騎手会としてやることもとても多くて…。大変な時期に会長になっちゃったなと(笑)。

―― 会長としてどんなことを心がけていますか?
川島 
コミュニケーションを多くとって、良い方向にしていきたいですね。毎朝調教も出ていて顔を合わせる騎手も多いですし、上も下も話しやすい立ち位置にいるのかなと。後輩たちも何でも言ってきてくれますし、みんなの意見をどんどん聞いていきたいなと思っています。

―― ここ3年、残念ながら「ふれあい広場」が開催できず、昨年と今年はファンとの交流企画としてYouTubeでの配信を行いましたね。
川島 
2022年、状況が落ち着いて「ふれあい広場」の開催ができればいいですね。ファンの方と交流できるのは本当に良い機会だと思っていますので。

―― 2022年、騎手会として何かやりたいことはありますか?
川島 
コロナの状況もあるので、まだ具体的な話はありません。逆に、ご要望があればお聞かせいただいて協力したいですね。たとえば、本橋騎手と本田騎手を結婚式の余興で使っていただいてもいいですし(笑)。先日のYouTube配信を見ても、「この2人、本当に面白いな」って。彼らは競馬の技術と一緒に、お笑いの技術も日々磨いていますよ(笑)。

―― 2024年3月には新スタンドの完成も待っています。期待はいかがでしょう?
川島 
これまでのスタンドに思い入れもありますが、新しく生まれ変わることで、今まで競馬に興味がなかった人たちにも知ってもらいたいですよね。カップルや家族などで、競馬だけじゃなくても楽しめるような場所になってくれたら嬉しいです。

―― 最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
川島 
船橋競馬は馬も強いですし、上手い騎手も多いので、皆さんに良いレースをお見せできると思っています。新しいスタンドにもぜひ足を運んでいただき、生で観戦してほしいです。お待ちしております!

―― 本日はありがとうございました。

取材・文/秋田奈津子
取材日/2021年11月29日

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